齢30にして思い立つ
生きてきて30年が経過した今、そろそろ自画像でも描いておいた方が良いと思う。
後世において自分の事が大々的に語られるような事があったなら、その際にこの自画像が映像情報として使用されるのです。
生きているうちに、なるべく早いうちに自画像を遺しておかなければ。
ただ難点があり、それはこの俺に絵心が皆無であるということ。
歴代の芸術家たちの足下つま先ほんの1ミリにも及ばない、いや、昨今の小中学生にも劣る描画能力。
まず三次元のものを二次元の媒体に描くという事ができない。
二次元に描くものをまた三次元的に見せるという技術ともなると、それはもう別の世界の能力であると思う。
それほどまでに絵を描くことが苦手です。
いいですか、試しに描いてみますよ。マウスで。

ひどい
これはひどい。あんまりだ。
一見して浮浪者と見間違う感じ。絵心が無いというのは、呪わしきコンプレックスなのです。
そこで考えました。
三次元のものを描く事ができないならば、二次元のものを描けばいい。
誰かに俺の似顔絵を描いてもらって、それを参考に俺が自画像として描く。
自画像なんてものはですね、結局描くにあたって誰が筆を走らせたか、が最重要事項であり本質なんですよ。
似顔絵を以て己を知る
そういえば自分自身をまじまじと見る事なんてそう無いので、いまいち顔の特徴というものがつかめない。
客観的に自分を見ることができないならば、他人に見てもらい、それをもって初めて自分をいうものを知ることができるのではないか。
似顔絵にはそういう力がある。他人から見た自分を知り、それにより自分が自分を知るのです。
自画像を描くという事は、つまり自分自身を知っていなければいけません。
なるべく多くの人に似顔絵を描いてもらい、多方面から自分を知っていこうと思うのです。
ということで、たくさん似顔絵を描かれまくる為に、とあるイベントに行ってきましたよ。

先日東京ビッグサイトで行われたデザインフェスタ。
会場内では様々な芸術がひしめき合い、訪れた人々を楽しませてくれます。
プロアマ問わず個人がブースを持ち、自分の「芸術」を出展する訳ですが、その中に似顔絵を描く事を自身の芸術、自己表現の方法として出展する人がちらほらいらっしゃるのです。
では次、できるだけ似顔絵です。
いろんな俺が誕生
まず基本形、というか写真で撮った俺ですが

寝起き…
汚いですね。
なんというか、犯人ですよね。
犯罪を犯していなくても、どこかへ逃げ出したい気分にさせられる自分自身の写真ですが、これが他人の目を通し、その感性により描かれる事でどういう俺が生まれるのでしょうか。

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ペン画 |
生まれたての俺 |
少女漫画風でいいですか?と、描き途中に訊かれましたが、果たして少女漫画にこんなの出てくるんでしょうか。
一見むきたまごのようなビジュアル。小綺麗なのか汚いのかわからない。
こういうの、よく本屋に飾ってありますよね。漫画家さんのサインみたいな。ありがとうございます。
「とうふわしずかみ」に関しては、意味不明のまま触れないでおいときます。

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コンテ画 |
すごい爽やか |
しきりに緊張する、緊張すると言っていた女性の方。できあがった似顔絵は、澄んだ目の、綺麗な心を持ったさわやかさんでした。
心の闇の部分が一切おもてに出ない、人畜無害な人材っぽく描いて下さいました。ありがとうございます。
「やさしい目をしていらっしゃいますね!」と言ってくださいましたが、それはたぶん苦労して探し、考えた末にひねり出した俺の、かろうじて褒められる部分だったのでしょう。
ごめんなさい気を遣わせてしまって。あとこんな顔でごめんなさい。生まれてきてごめんなさい。

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水彩絵の具画 |
超メルヘン |
ひー、これまたかわいい感じに!かわいい!俺超かわいい!実物はかわいくない!
頭になんか船が乗っかっているのが気になりますが、「少年っぽさを演出してみました!」とのこと。
精神年齢が8歳程度という俺の内面を見透かされたようです。
こんなかわいく描かれた事が無いので少々照れますが、こんな俺でもこのように仕上げる事ができるとは素晴らしい才能だと思います。
ありがとうございます。

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ペン画 |
全国指名手配中 |
いきなり現実の世界に突き落とされた感。警察の似顔絵捜査官が描く犯人像のよう。
このまま各地の交番にこれが掲示されていても何の違和感もなさそう。いやまて。俺は犯罪者じゃない。
今回描いてもらった中で一番現実を直視した感じのものがこれだと思う。俺の、何とも救いようのない感がストレートにあらわれている気がします。
すごく似てる。ありがとうございます。

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筆ペン画 |
超男前 |
漫画風似顔絵と銘打っていらっしゃったこの方、俺が漫画に登場したらこんな感じになるそうです。
すごいカッケー。この方の描く漫画はきっと美男美女ばかりなんでしょう。
「すいません、ワイルド系の顔は苦手なんですよ、すいませんすいません」としきりに謝っていましたが、そんな事はないです。よく描けていると思います。
それとも「不細工には描けないんですよすいませんすいません」という、遠回しの嫌味だったんでしょうか。
描く目がみんな流川になってしまうというこの方。「スラムダンク見て勉強します」とおっしゃっていましたが、それだと何も変われないと思う。
ありがとうございます、こんなにかっこよく描いていただいて。

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色鉛筆画 |
ほのぼの漫画チック |
こちらの方も漫画風似顔絵ということですが、さきほどが剛ならこちらは柔といった感じです。
やわらかい色鉛筆のタッチに大胆な色使い。なかなか卓越したセンスの持ち主であると思います。
ジャンル的に言うとやはり男前系に仕上げて頂いたのですが、似顔絵とは得てしてそういうものなんでしょうね。
この方、見た目がかなり漫画家さんぽかったです。ありがとうございます。

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水墨画 |
素浪人 |
半紙に筆で描く水墨画の似顔絵。料金が無料な代わりに、書き上がった似顔絵は頂くことができない。
孤高なアーティストのこだわりを感じさせるこの方が描いた俺は、時代劇に出てきそうな風貌のサムライでした。
なんか用心棒っぽい。
精悍な顔つきで一分の隙もない、現実の俺と比べてみると真逆の性格な訳ですが、この画が俺だと思うとなんだか誇らしく思えてしまいます。勘違い。
最後にアメも頂きました。ありがとうございます。
いよいよ自画像を
似顔絵を描いて頂いている際、当然ですがキャンバスと俺、交互に視線をやる先方。
目が合うと気まずく思ってしまい、ことごとく目線を外したりして常時挙動不審者であった俺ですが、7枚もの似顔絵を描いて頂きました。
それぞれがそれぞれ、その姿に統一感は無いけれど、やはり俺にどこか似ています。俺だと認識する事ができるような気がします。
それは何故か。そのポイントが俺の個性であり特徴、しいてはアイデンティティーなんだと思います。
で、総合的に考えた結果
・その髪型
・そのヒゲ
という結論に至った訳です。
俺のほとんどは毛でできております。そうだったんだ。
さて、これらを参考にして全てを織り交ぜつつ、自画像を描いていこうと思います。
いくら絵心が無い俺でも、うつし絵ならいくらか自信がありますよ。

俺がたくさんみつめてる
こんな沢山の似顔絵を部屋に飾ってるところを誰かにみられたら、お前どんだけ自分大好き人間なんだと非難の対象になりかねないところですが、実際自分でもかなり引く光景でありますから、普段は大切に保管してある訳です。
大丈夫です。自画像を描く今だけですよこの光景は。
7枚の似顔絵、それぞれのセンス、感性のエッセンスを全て調合し、ひとつの究極の自画像をつくりあげていきます。
小一時間程度、がんばって描いた結果がこちらです。

誰
・・・・・。
なんだか微妙な感じになってしまいました。ビックリです。
っていうかこれ、俺じゃない。誰だこれ。
男性化した宮里藍さんのような。完全に沖縄系のまなざし。海男ですね。海賊か。
目、鼻、口など、それぞれのパーツはそのままコピーしたつもりでした。
ならば何故、俺の顔にならない。選別したパーツを間違えてしまったのか。
俺の思うところの究極の自画像とは、自分に似ていませんでした。
なんということでしょう。
やっぱり自分の画力で
という訳で自画像とは、最初から最後まで自分で描いてこその自画像であるのだという事を知りました。
満足のいく自画像を描くには、自らの画力と観察力、表現力を磨くしかないのですね。
精進していきたいと思います。
とりあえず現時点の俺の限界はこれなので、これが俺の自画像、ということにしておきます。

どうも、俺です
将来俺が紹介される際にこの画像が使われたときは、あーあいつ画力向上がかなわなかったんだなと思って下さい。
よろしくおねがいします。
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